2011年7月28日木曜日

アルメノンビジェでの出来事( 2 )











上の写真:ガルデルとラサーノ
下の写真:ロベルト・フィルポとオルケスタ・ティピカ

その翌夜の舞台では,ロベルト・フィルポとオルケスタ・ティピカによるタンゴがすすり泣くよう演奏された後に,ガルデルとロサーノのデュエットは、いよいよ初出演で登場。

Toma esta rosa encarnada/この化身したバラをとれ
y abrila questa en capullo/そして,つぼみをひらけ
y versa mi Corazon/そして,わが心を見ておくれ 
abrazado con el tuyo/おまえのものと共に抱きいだき
abrazado con el tuyo/おまえのものと共に抱きいだき
Pero el alma separada/だが,魂はしき裂かれ

大喝采の獲得..やがて夜が迫り,キャバレーは金色に輝き,デュエット二回目の公演は
狂乱状態になる。

No te duerma, mi querida/眠るな,わが愛の人
no te duerma, mi adorada/眠るな,わが慕し人,
que viene aclarando el dia/陽が が明けき来る 
la madrugada/夜明けて

そして,その後:

Esta cancion la cantamos/歌いつくしてこの歌を
en casa del Taita Pancho,/タイタ・パンチョの家で
y unos guasos por oirla/そして,田舎者が聴くために
voltearon la puerta el rancho../牧場のとびらをあけ広げ..

そして,更に夜ふけて...

En un pueblito de Salta/サルタのいなかにて 
la gente de baile esta /このダンスを人と
con chichi y pata de cabra/ヤギ足アサードと地さけ
hasta el alba seguiran./夜明けまで続けとばかり

富裕家と高級政治家の上流階級達の人々はダンスフロアーをここ狭きと踊り動きめぐらした。ティピカが再びタンゴの呟きを奏で始めるとき,ガルデルとロサーノは火照った顔と皺だらけにした服装,不安な眼差し,震え声で舞台の後ろ側を退場していった。カルロス...成功に気づいたか。兄弟よ?うん,カルロスは同僚と同じ様に,あまりの優美さに真実がまるで嘘の様なのと,慎ましくも報われたのだと信じ納得しようとした。ホセ,騙されるな...これは贅沢な身分,我々を冷やかしているんだ!...しかしながら,ゆっくりと流れが氾濫した謙虚とあざけの亡霊が逃げ出した様に,偽ではない何かがあった。冷やかしとしても,どの様に望むのだ?。あの高貴な人達が涙ぐんでいたが!...と,ロサーノはガルデルに見返り無しの意見を洩らした。

後年,エンリケ・カディカモが遥かなる回想の脳裏に残る,デュエットの夜集を,この詩歌で深いリリシズムで回想している。その詩は,,,


Viejo “Armenonvil”/古き“アルメノンビル”
eres el pasado lejano/ああ,ふるき過ぎし日の
Que distante quedaron los aplausos,/喝采は遥かにおきざりにされ,
cuando el debut de Gardel‐Rozzano/それはガルデル-ロサーノがデビューしたとき

彼達ガルデル-ロサーノは,ここでロベルト・フィルポ、エドゥアルド・アローラス、ティト・ロカッタグリァタと当時の怱々たるタンゴ楽団のマエストロらに巡り会う。かの著名な名高いキャバレー“アルメノンビジェ”は1911年末にカルロス・ボニファシオ・ランサベチアとマヌエル・ロウレイロ氏達により,パレルモ公園前のアルベアル大通(現在リベルター大通)とタグレ(calle Tagle)の角に開店された。バンドネオンニスト、フアン・マグリオ“パチョ”はこの店の経営者の親身な友人の一人であつた。彼“パチョ”はその物ずばりの“アルメノンビジェ”と称名したタンゴを作曲し、この店に捧げている。タジーニ商会占有のコロンビア・レーベルにコルネットバイオリン弾き,ホセ“ペピノ”ボナノ、フルート奏者カルロス“ヘルナニ”マツチ、7弦ギター奏者ルシアーノ・リオスと彼マグリオ自身のバンドネオンのメンバーによる演奏でこの曲“アルメノンビジェ”を1912年にガルデルより先に録音(レコード番号T520/56606)している。経営者の娘,マリア・ルイサ・ランサベチア著書“エル・レハーノ(かの遥かな)・アルメノンビジェ”によると、この店に最初に出演したオルケスタはビセンテ・グレコ、フランシスコ・カナロ、ロベルト・フィルポのビアノとバンドネオンのエドアルド・アローラス、バオリンのティト・ロカタグリアッタとバホのレオポルド・トンプソンのクアルテート・ティビコ,ビエベニーダとホセ・オルサリ(ピアノ、ビオリン二重奏),アルトゥール・デ・ナバの怱々たる面々の名を挙げている(説明不可能な事に“パチョ”マグリオは出演して無い)。この曲“アルノンビジェ”の録音は“パチョ”マグリオの1929年(2度目)、ロベルト・フィルポ(22年)、フアン・ダリエンソ(70年)、その他数楽団の演奏がある。(データはDiario CRONICAによる)

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