2012年5月28日月曜日

ガルデルのCDシリーズ:CD-4/1~9曲

しばらく横道にそれていたがまたCDシリーズに戻る


ガルデルのCD-4(原盤録音:1919~20年)/1919年からの続き“ナショナル-オデオン”,“クリオージョ-オデオン”レーベルによるアコスティク録音/全曲ともホセ・“ネグロ”・リカルドとホセ・ラサーノのギターで伴奏されている。


①:エル・カルド・アスール(蒼いアザミ)/エスティーロ/作者:ガルデル-ラサーノ/歌:ガルデルソロ/1919年3月19日録音/原盤#18018B/
この曲はガルデルの初めてレコード録音(1912年)をした時の5曲目の“ポーブレ・フロール(哀れな花)”と“エル・カルド・アスール”は同じ構成にしている。そして,女流詩人イサベル・セリア・カナベリが1899年11月にキルメスで発表した“フロール・デ・カルド(アザミの花)”の詩から初めの部分の二節が抜粋されている。この詩のオリジナル作者はブエノスアイレス郊外のキルメスで1882年生まれ,1945年2月28日ラ・プラタで亡くなった。彼女は我々の知らない小冊子に幾つかの散文詩を載せているだが,その素晴しい才能に反して経歴は淡い霧の中の謎に埋まれている。詩作“フロール・デ・カルド”はモンテビデオで発刊された“エル・フォゴン(焚き火)”誌の1899年11月30日52号に記載されていた。

Entre mil flores silvestres , /野性花々に埋まれて,
en un campo muy gallardo , /いかに気高くも野原で,
se alzaba un vistoso cardo /鮮やかなアザミを高くささげ
con sus penachos de tul , /チュール共にたなびく,
y del rocio las perlas /真珠を撒き散らし
blanquicinas parecian , /まるで白く磨かれ,
y banadas se veian , /一浴びに似た
las hebras del cardo azul. /蒼いアザミの髪

②:サンファニーナ・デ・ミ・アモール(わが愛のサンファン娘)/作者:アンヘル・グレコとフランシスコ・マルティーノ/トナーダ/歌:ガルデル-ラサーノ/1919年3月19日録音/原盤#18018A/
作者の一人,アンヘル・グレコはタンゴ界の名門家族の一員でビセンテ(タンゴ,アルマ・ポルテーニャなど作曲),ドミンゴ,エレーナとマリア達兄弟姉妹が含まれいた。彼等の名声は歴史中黄金の活字で彫まれている。彼はナショナル劇場創立者ペペ・ポデスタが創めたサーカスにデビューしたがテアトロの歌手として転向に成功。1916年にガルデルのギタリスト,アンヘル(従兄弟)のウルグアイ歌手イグナシオ・リベロールと二重唱を結成した。後にフランシスコ・マルティーノともドゥオを1921年頃まで組む。彼等はポルテーニョ界の多くのステージに上る。そして“アトランタ”レーベルにレコード録音も果たしている。ガルデルとは青年期よりの友情関係にあり最初から歌手として競争相手としての阻害を与える事無く,逆にこの曲や“ミ・パニュエロ・ボルダード(刺繍されたハンカチ)”,“エル・カント・デ・ラ・セルバ(密林への歌)”,“チニータ・リンダ(可愛い女の子)”,“カルティータス・ペルフマーダス(香水香る手紙)”,“ナイペ・マルカード(印のあるトランプ)”などのその他多くの曲をガルデルが取り上げ歌っている。グレコは1893年3月9日サンテルモに生まれ,1938年10月4日同地にて没した。フランシスコ・マルティノはガルデルの友人て在ると共に最初の二重唱を組んだ相手である。彼については『ガルデルとフォルクローレ』で解説してある。

③:ラ・コルドベサ(コルドバ女)/作者:クリスティーノ・タピア/サンバ/歌:ガルデル-ラサーノ/1919年3月19日録音/原盤#18019A/
この歌はコルドバ賛歌でこの様に始まる。Estas es la zamba linda , mi vida !/ これは美しいサンバ,わが命!/que cantan los cordobeses, /コルドバの人々はこう歌う/タピアはコルドバの出身。ギター奏者,クリオージョ音楽の作曲家,ガルデルは彼の12作品を録音した.“ミ・ティーラ(我が故郷)”,“ラ・トゥプンガニータ”,“セバ・セバ(行く,いく)”,“テンドラス・ケ・ジョラール(泣かなければならない)”,“ロサル・ビエホ(枯れたバラの木)”他多くの作品あり。タピア-ジャネス,タピア-カルトス,タピア-アルマーダ,タピア-オレジャーナ(彼の妻)との二重唱を組む。1972年8月7日コルドバで没。



④:パヴァーダス(馬鹿らしい)/シフラ/作者:ガルデル-ラサーノ/歌:ホセ・ラサーノソロ/朗唱:カルロス・ガルデル/1919年3月19日録音/原盤#18019B/『エラ』レーベル60975(*)
原作はアルベルト・アウレリアーノ・ノビオンに帰属する。この曲は小生が参考にしているハイメ・リコ・サラサールの“ガルデルの原盤リスト”から漏れているのだが別のデータから前曲の“ラ・コルドベサ”と原盤番号が同じ対でレコード化されているのを発見した。これはオラシオ・ロリエンテが監修してウルグアイで発売(時期不明)されていた“ガルデル-ラサーノ達のアクスティク時代”のLP盤Vol.④(URL18018/18023)A面4曲目にリストアップされている。『エラ』レーベルは1910~17年に存在した。タジーニ商会のホセの兄弟のフアン・バウティスタ・タジーニが1913~4年にかけてすでに録音済みの他社のレコードをこの『エラ』から再発売したものである。

⑤:エル・ヴガブンド(放浪者)/バンブーコ/原作詩:フルヘンシォ・ガルシア/歌:ガルデル-ラサーノ/1919年3月19日録音/原盤#18020A/
この曲はコロンビア民謡で作者不明とあるデータもあるが,オリジナル詩はコロンビア人フルへンシォ・ガルシアに帰属する。この詩歌の最終部分はアンダルシアのバラードの一部に類似しているがメロディーの作者は不明だと言う。ガルデルはこの曲もスコラッティの編曲を基したフラメンコ調にアレンジしている。また,オリジナルの“エル・ヴガブンド(放浪者)”はコロンビア人レオネル・カジェとエウセビオ・オチョアが歌うリラ・アンティオケ―ニョのレコード録音(1910年6月)がメキヒコに存在する。

⑥:デ・ヴェルタ・アル・ブリン/タンゴ/作詞:バスクアル・コントゥルシ/作曲:フランシスコ・マルティネス/歌:ガルデルソロ/1919年3月19日録音/原盤#18020B/

Percanta que arrepentida/後悔した魅惑女
De tu juida/逃げ出したあんたが
has vuelto al bulin /,逢引部屋にそのあんたは戻って来た
con todos los despechos /妬みの全てとともに
que vos me has hecho,te perdone…./あんたが俺にした事々を、俺は許した...
Cuantas veces contigo /あんたと幾たびか
Y con mis amigos/そして俺の仲間等とともに
me en curdele,,/酔い潰れ明かし
y en una noche de atorro/あげくにある夜...
/ガルデルの声は極限歌手の名を裏切らない新鮮な美声眩く煌めきが冴える。

⑦:ミ・チーナ(俺の可愛い子)/ファド/作者:ロドリゲス(a)-ロルダン(b)/歌:ガルデル-ラサーノ/1920年9月26日録音/原盤#18021A/
このポルトガル民謡の甘美切ないファドを彼等は最高の歌解釈にこなしている。
.(a):本名フアン・ロドリゲス/ピアニスト,作曲家,ブエノスの音楽学校“ガイト”に入学。その後両親とバルセローナへ移住する。そこでナショナル音楽学校に学び,そこでピアノと和声法を専攻した後にパリへ演奏公演した時にその上品な演奏を認められる。1914年帰国後ポビュラー界に参入。アグスト・ベルトと“アトランタ”にレコード録音。フアン・マグリオ・パチョと“コロンビア”にも録音。あの華やかな“アルメノンビジェ”,“バリシエン”,にも登場。その後モンテビデオのソリス劇場にも出演した。ガルデルは“ミ・チーナ”とタンゴ“ケハ・インディアーナ”を録音した。彼ロドリゲスは1895年10月19日アバストに生れ1928年4月4日没。
(b):本名ルイス・ペドロ・ビクトル・ロルダン(ルイス・カンデーラ)/1894年5月13日生~1943年8月7日没/詩人/夕刊評論紙に記者として30年間勤務する。ガルデルは彼のタンゴ“カルネ・デ・カバレー(キャバレーの肉体)”,“ラ・トリステサ・デ・ブリン(ブリンの悲劇)”を録音している。

⑧:アマネセール(夜明け)/シフラ/作者:ガルデル-ラサーノ/歌:ガルデルソロ/1919年9月26日録音/原盤#18021B/
この著作について異議を称える者は出ていないのだが,ウルグアイ詩人アリアス・レグレスの詞にガルデルが曲を付けた作品である。レグレスについてのデータは『ラプラタ地方のフォルクローレ』を参照の事。

Que lindo es ver por el llano ! /平原から見るのはなんと美しい!
Que lindo es ver por el llano ! /平原から見るのはなんと美しい!
Ande se va un pollero /スカート姿が過ぎ行く
que partica , y altanero va su viguela portando /バルティカ,高慢なほほに風受けて
para los perros ladrando /犬が吼えながら
y un resuello y un maceta ; /苦しそうなよぼよぼに

⑨:(エル)ミロンゴン(主題?:カンシォン・アグレステ/ひなびた歌))/ミロンガ/作者:パシャドール,アンブロシオ・リオ(渾名カピチェラ)/歌:ガルデル-ラサーノ/1919年9月26日録音日同上/原盤#18022A/
二重唱の際立った歌とホセ・リカルドの完璧な技巧演奏によるギター伴奏が冴える。

Lindo es el primer albor , /初めのあけぼのは美しい
que viene anunciado el dia /生存を告げに遣ってくる
y tras de las cerrania /丘陵の彼方から
repunta el astro mayor . /偉大なスターの前触れ.

アンブロシオ・リオは1900年の18歳頃からバジャドール,ラモン・ビェイテのコントラプントに参加して歌い始める。彼独特の天真爛漫と我々のフォルクローレへの愛惜が滲む歌うスタイル。有名になる前からガルデルとは親交を交わしていた。“エル・バイサーノ・コントレーラ(同郷人~”,“エル・サイノ・コロラド(赤毛の子馬)”,“リオハーナ・ミア”,“ポーブレ・ミ・ガウチャ”などガルデルが録音した曲がある。リオはイタリア,ナポリに1882年生まれ,生後50日にしてアルゼンチンに両親に連れられ移住した。1931年6月9日ブエノスにて没した。

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