2011年10月10日月曜日

ガルデルのCD-3(①:エル・モーロ)


ガルデル全コレクションに戻り解説を続けていきます。














①:エル・モーロ/タンゴ/作詞:フアン・マリア・グティーレス/作曲:ガルデル-ラサーノ
歌:ガルデル-ラサーノ(口笛は誰か吹いてるのでしょう)とロベルト・フィルポ楽団の演奏
1917年11月16日録音/原盤レコード番号583-137
CD‐2 ;10曲目のカンシオンと同じ詞と曲であるが,ロベルト・フィルポによりタンゴへ編曲された。

この“エル・モーロ”はガルデルが歌った初めてのタンゴらしき曲でしょう。ガルデルとフィルポの共演はキャバレー“アルノンビージェ”での始めての共演から,この録音が終わった後にブエノスアイレス州地方へ共に巡業へと出かけたとか,他にも数回の共演があるが,レコード録音はこれだけの“隋一”の貴重なものです。この録音はフィルポ楽団単独のみで予定されていた所へ,楽団メンバーの“闘牛登場”との掛け声に誘われたように,牛角を付けたガルデル-ラサーノらがスタジオに乱入した挙句に,冗談半分に牛の如く這い回り,この曲を歌い始めたのが,そのまま録音が続行されたのだそうです。重厚なフィルポのピアノのタンゴ・リズムに乗った軽快な歌い回しで,失ってしまった愛馬を回想した思いが胸に迫ってくる美唱。このSPレコードのラベルにはガルデル‐ラサーノ等の名前は不思議な事に書いてありません。これはフィルポが冗談の“仕返し”をしたのでは(?)と思われます。

ここでこの曲を演奏したマエストロの経歴を簡単に紹介しましょう:
ロベルト・フィルポ(1884510~1969614日)ピアニスト,作曲家,ディレクター。ピアノは19歳の時に“インデペンデンシア(独立)”,“アポロ”,“ベヌス”の作者アルフレッド・ビジャクアに師事。4年後の1907年に“ラ・チョーラ(臆病)”,“エル・コンピンチェ(共犯者)”,“ラ・ガウチャ・マヌエラ”を作曲発表し,作曲家としてのインスピレーションを披露した。その後バイオリン奏者,フランシスコ・ポスティグリオーネとクラリネット奏者のファン・カルロス・バサンらとトリオを組み“ロ・デ・ハンセン”にデビューした。フィルポは1913年にオルケスタを結成。“アルガニャラス”,“センチメント・クリオージョ(クリオージョの悲しみ)”,“デ・プーラ・セパ”,“マレハーダ(うねり,不満の声)”等の作曲。翌年にはロマン溢れた曲“アルマ・デ・ボヘミオ(ボヘミオの魂)”を世に問い,幸先の良い成功を感受した。有名な“エル・アマネセール(夜明け)”,“エル・ラピド(急行列車)”,“エル・アプロンテ(準備,競馬の試走)”,“モンテビデオ”などが多数上げられる。(ガルデルは191710月のチリー,ビニャ・デル・マール公演の時に,この“モンテビデオ”曲でタンゴダンスを踊り,優れたミロンゲーロ振りをチリー人観衆に見せつけたエピソードが語られている)。もう一つの有名曲のフェゴ・アルティシアル(花火)はエドアルド・アローラスとの合作である。彼フィルポは初期からタンゴにピアノを導入してオルケスタ・ティピカのスタイルを確立させ,タンゴ発展に最も奨励した重要な一人に挙げられる人物である。また,彼の演奏はペダル使いを手始め,より重厚なレソナンスをかもし出す洗練されたスタイルの持ち主であり,ロマンに溢れたタンゴを世のファンに提供の上に,本格的古典タンゴの数々を堪能させてくれた。
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2 件のコメント:

タンゴカブキ さんのコメント...

Gardel=Razzonoの美しいドゥオが聴ける頃の作品ですね。私は先日のステージでMano a manoを歌わせてもらいましたがこれもこのコンビの作品ですね。

El Bohemio さんのコメント...

タンゴカブキさん:
是非"マルゴー"も歌ってください!