2010年3月31日水曜日

ガルデルの恋愛遍歴(3):滅亡ハンガリー帝国の貴婦人

夜の眠れないひと時にガルデルのCDに聞き入る中、突然“ノ・メ・アブレ・デ・アモール(愛の話をしないでおくれ)”(1)との歌声に一瞬彼に叱られた気持ちに落ち込んだが、このシリーズを始めたばかりなので無視する。処で、当時丁度ボゴタにガルデルが滞在公演前後して、偶然か故意か謎に包まれた人物イボンヌ・ギテライがかの歌手の友人で当国映画界社主二コラス・ディアスに彼女自身の秘密を明かした物語を載せよう:

『私の家族は滅亡ハンガリー王国の上流社会に所属し、何所か名前を出したくない有名な都市で私の母は女子神学校の学長を勤め、エリート育成していたが、第一次大戦後のトリアノン条約(2)で数千人の犠牲者の中で戦後の動揺した政権の波乱時代になると、私の家族は財産を失ない。私自身の若さと美貌と高等教育が粗末なタイピストに成り下がるのを妨げ、人生の進路を見失い、どの道を選択するか迷っていた。その時、私の人生に突然にヨーロッパ・リゾートのコスモポリタン上層世界貴族階級の一人の素敵なプリンスが出現した。私の若さと彼は外国人のため家族は反対したが若き幻想にひかれ結婚した。新婚旅行はパリー、二ース、カプリ、夫は絶対に母親代わりせず幻想の挫折の後、我が婚姻の悲劇を破廉恥に知人へ話すことも出来ず、16歳になり行く先不明の巡礼するかの様に極東帝国日本、ジャワ、エジプトなどを彷徨しシャンパンの祭り騒ぎに偽喜びの嘆き魂の破滅を一掃しようと努めた。時は過ぎて行き‘27年に我々夫婦はコート・ダジュールに落ち着く。コスモポリタン社交界群に属す競馬場、ダンス・サロン、カジーノを私は強く支配し敬意を得た。ある夏の華麗な日に『離婚』の最終的決心をする。富豪華に微笑む春のパリー、花咲くカーニバルのニース、カンヌのミモザ花の祭りと愛の歌、空、海の自然は花咲き視野が開き青春賛歌との世界の中に家庭を捨てて一人飛び出した。それは18歳の頃、パリーに孤独に住み明確な目的もなく、1928年のパリー、パリーの放埓と贅沢なシャンパン、価値無しのフランコのパリー、外人パライソのパリー、小王様金持ちヤンキーと南米人で充満した、パリー、1928年のパリー、外人の財布を空にせしめる新しい興奮、毎日新しいキャバレーが誕生していたパリー、パリー18歳、金髪、青い瞳、一人孤独、その不幸の苦しみを和らげ様と快楽の深みにのめり込んで行く私。キャバレーでは常時人目に注目の元、金額に疎く、踊り子に振舞うシャンパン、給仕に与える高額な心ずけ、何時も一人で現れる。何時か、あの国際性豊かな環境にて徘徊する一つのあの要素に秘密の罪を発見する。それは忘却するための手段を誰かに薦められてコカイン、モルフィーナ、ドラッグ、奇怪な様相の踊り子、褐色な色合いの豊富な毛髪の南米人、エキゾチックな場所探し。あの時代に『フロリダ』に今着いたばかりのデビューしたキャバレーの歌い手、エキゾチックな言葉で歌うエキゾチックな唄、盛大な拍手受け成功。その時まで未知の場所にて不思議な衣装で唄う、アルヘンティ-ナのタンゴ、ランチェーラ、サンバ。彼は白い歯、痩せ型、少しモローチョ青年、美しいパリーの誰かの注意を満たす人、彼はカルロス・ガルデル。全魂で唄う泣き節タンゴ、観衆の心を何故か知らず虜にする不思議。モダン・タンゴでなくそれは古いアルヘンティーナの唄、真髄のパンパのガウチョの魂、カミニート、ラ・チャカレーラ、アケル・タパド・デ・アルミニョ、ケハ・インディアーナ、エントレ・スエニョ、彼ガルデルは流行最先端にいた。ロンジュシャン・ホテルの常連客、キャバレー、劇場、ミュージック・ホール、競馬場、全ての処でその顔モローチョ、白い歯、輝く清々しい笑顔。しかし、ガルデルは彼の仲間内サクールのみにての興じる方法が好きだった。あの時期に南米人が独占的に出入りした、クリシェ通にある、“パレルモ”と呼ばれたキャバレーがあった。そこで私はガルデルに知り会う、彼は全女性に興味を示したが、でも、私にとってコカイン、、、とシャンパン以上に関心を持てなかった。パリーでめぐり遇う日々の男達と女性間のアイドル的の私に女性らしい虚栄心をくすぐるが、しかし私の心には待つたくの反応は無い。あの時の親交はあの夜、あの散歩、あの内緒事、花庭園の眺め越しにパリーの冴えない月光下に再確認。ロマンス利害関係は幾多の日々が過ぎていく。誓いは絹のよう、美辞麗句は冷淡な岩のような心に深く食いこみ、あの男は私の魂の中に入り込んでくる。私は気が狂い、私の華麗なピシート(男)は私の悲しみの内に今は光の充満の中にいる。もうキャバレーには戻らない私、私の華麗な灰色の部屋、電気スタンドの煌めき、モレーノ姿に確固たる調和した金髪姿。私の青い部屋、行き先不明の魂のノルタルジー、全て知り、今、真の愛の巣、それは私の初愛』。

どの位時期過ぎしか告げかねぬ、時は果かなく激流ごとき過ぎ去り、パリーを眩惑させ風変わりな金髪女、高貴な香水、シャンパンとルシア・キャビア、日々の手堅い皿を飾る慇懃なパーティーは姿を消した。数ヶ月過ぎ、パレルモ、フロリダ、ガロンなどの永遠の常連客は新聞記事により20歳の金髪、青い目の踊り子は前代見聞きの厚かましき天下の踊り手は花咲く青春の全ての官能美によりポルテニョの若旦那達を熱狂させた事を知る。その人、イボンヌ・ギトライ。そして、数年後舞台は南米アンデス山の小都市ボゴタに“メレニータ・デ・オロ”婦人、彼女は現れる。この地に如何に来たか何人知れず、時はガルデルが丁度公演中か、彼の後追いパリーから長旅、密かに彼と蜜会か、それも適われず、自殺未遂でボゴタ世間の話題のり、そして、ガルデルと恋物語の告白、無事にパリーに帰還したか、その後の彼女の消息を知る人物はいない。

Nota:Mario Salmiento Vargas en el ciudad de Bogota Colombia
マリオ・サルミエント氏作を小生風にアレンジしてある)
注:(1)“ノ・メ・アブレ・デ・アモール(愛の話はしないでおくれ)”のせりふが出てくる曲は“ベサメ・エン・ラ・ボーカ(唇にキスして)”作詞:エドワルド・カルボ、作曲:ホセ・マリア・リスティー、#18169A、ホセ・リカルド、ギジェルモ・バルビエリらのギター伴奏で‘26年録音

注:(2)トリアノン条約は1920年6月4日に第一次世界大戦の敗戦国、ハンガリー帝国と勝戦連合国がフランス、ベルサイユ宮殿大トリアノンにて結んだ条約。

Wikipediaの『トリアノン条約』を参考ください
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