2010年10月12日火曜日

ガルデルとタンゴの詩人、作曲家達(1)



(3)パスクアル コントウルシの4番目のタンゴ『イベッテー』


この不思議纏わるタンゴは例によって詞のないまま、初めセレスティーノ フェレール{a}により曲の楽団演奏のみで1918年8月16日にビクターレーベルに録音、レコード番号は72161-Aである。この曲の元楽譜には作曲者はコスタ‐ローカ{b}、ピアノ演奏用とあり、日付けも捧げ人の名もない、変ってコントウルシの作詞した楽譜には1919年2月28日、プレジェール兄弟社出版。ミジェへ、、『イベッテー』に捧げるとあり、説明には音楽はコスタ‐ローカ作、アゥグスト ベルト{c}の捺印がある。後にフリオ ローカは50ペソにて版権をアウグスト ベルトに譲るのだが、作曲者協会は『コスタ‐ローカ』お名義を残している。ところが本当の作曲者はキンテート フランシコ カナロのピアニスト、ホセ マルティーネス{d}だと言う説があり、随分ややこしい話である。種を明かすとエミリアーノ コスタとフリオ ローカはホセ マルティーネスが演奏活動していたコンフェテリーアの経営者達(反論もある)であったとか。又、コスタ(演奏楽器は不明)はマヌエル アロステギ{e}とオスバルド フレセドらとトリオを組んでいた。フリオ ローカの方は音楽家であっかどうかも不明だがバンドネオン奏者のガブリエル クラウシによる証言では彼は歴代大統領の同名の子息であるそうで、優れたアマチュアのタンゴダンサー(ミロンゲーロ)でポルテーニョの夜を優美に振舞い、万人の注目の的であったとか...

ところでカルロス ガルデルは『イベッテー』を1920年に4番目のタンゴとしてホセ リカルドのギター伴奏で録音した。この録音はwww.todotango.com.arで聞ける。

注:
{a}セレスティーノ フレール;1890年生まれ(日付け不明)、ギターからピアノ弾きになる。
1907年にアルフレッドゴビ夫妻、アンヘルビジョルドらとレコード録音する為にパリに渡航。1911年にエンリケ サボリードとパリに行きタンゴの普及に奨励する。
{b}コスタ‐ローカ;タンゴ『イベッテー』作曲版権所持者。
エミィアーノ コスタとフリオ ローカの両者。
{c}アグスト ペドロ ベルトはバンドネオン奏者、作曲家、楽団指揮、1889年2月4日、バイア ブランカ生、1953年4月29日没。古典タンゴの『フエジェーロ』先駆者的存在。幼年期にマンドリイン、ギターを習得、後にバイオリンに転向、バンドネオンはホセ ピアッサ「ぺピン」に師事。ビセンテ グレコ、フアン マグリオらとタンゴ初期に奨励する。
『ラ パジャンガ』、『ドン エステバン』、『ドンデ エスタ コラソン』ら、数々の作品がある。フルベルトは1953年にベルト追悼にタンゴ『ケハ デ バンドネオン』を捧げている。
{d}ホセ マルティーネスは『デ ブエルタ アル ブリン』の作曲者でもある。
{e}マヌエル アロステギ(1888年1月4日、モンテビデオ生―1938年11月14日没)、
ピアニスト、1913年『エル アパチェ アルヘンティーノ』を作曲する。


『Ivette』とは女性の名前、ではコントウルシの詞の内容は。
En puerta de un boliche
居酒屋の入り口にて
un bacan encurderado,
酔い潰れた伊達男
recordando su pasado
過去を回想して
que la china lo dejo,
去った可憐な乙女の、
entre los humos de cana
地酒のいきれ唯中で、
retoman a su memoria
記憶を呼び戻し
esas paginas de histria
その物語のページに
que su Corazon grabo,
心に刻まれた
Bulin que ya no te veo
もう、おまえの姿の無い部屋
catre que ya no apolillo,
俺の寝姿無いベット、
mina que de puro esquillo
怒りおぽい女 
con otro bacan se fue;
あの別の伊達男と去って
prenda que fuiste el encanto
魅力的だったあの装い姿
de toda la muchachada
全ての若者達にも
y que por una pavada
挙句の果てにあの愚か事のために
te acoplaste a un no seque
おまえの和解は引き起こせず

Que te ha de dar ese otro
あいつがおまえに施しに
que tu viejo no te ha dado
実の親父も与えられ無った物も
No te acordas que he robado
思い出さないかい、俺が盗んだ物を
pa que no falte el bullon?
喰い糧不足に成らない為に

No te acordas cuando en cana
思い出さないかい、あの時に俺が牢屋に居た時を
te mandaba en cuadernitos
おまえに届けた小ノート
aquellos lindos versitos
あの綺麗な散文
nacidos del corazon?
俺の芽生えた真心の?

No te acordas que conmigo
思い出さぬか、この俺と
usaste el primer sombrero
初めての帽子を使ったのを
y aquel cinturon de cuero
そしてあの時の皮ベルト
que a otra mina le saque?
あの女から取り上げた物
No te traje pa tu Santo
おまえを当惑させず、有益に
un par de zarzos de bute
幾つかの高級指輪と
que un anoche a un farabute
ある夜にあの悪党に
del cotorro le piante
逢引部屋から逃げ出して.

Y con ellos unas botas
そして彼らとあのブーツの
con las canas de gamuza
白セーム革が飾られた
y una pollera papusa
そして魅惑なスカート
hecha de seda crepe?
繊細な絹したての

No te acordas que traia
持ってきたのを思い出さないかい
aquella crema lechuga
あのレタスクリーム
que hasta la ultima verruga
最後の立ちはだかりの、おまえの表情しぐさゆえ
Y aquellos polvos rosados
あの頃のピンク化粧
que aumentaban tus colores
色ずき増しつつ
recordando sus amores
愛を回想した挙句
el pobre bacan lloro…
悲しき伊達男は涙ぐむ...

ルンファルドの解説:
Boliche;居酒屋、Bacan;伊達男、Encurderado;深酔い、
China;乙女、Cana;白髪、心労、牢屋、Bulin;逢引部屋、
Catre;Cama寝床、べット、Apolillo;寝る、Mina;女、
Esquillo;Rabieta;怒り,かんしゃく、Muchachada;幼稚な、腕白、若者仲間
Cuadernito;政治結社、Zarzo ;指輪,Bute;muy buena calidad;最上品質、上等な、高級な、Furabute;Picaro,悪党,ずる賢い、Fanfarron、虚勢はり、ほら吹き、
Piante;追い払う、Pollera;スカート、Papusa;魅惑女、
Verruga;Obstaculo;邪魔、障害
にほんブログ村 音楽ブログ ワールドミュージックへ
にほんブログ村
にほんブログ村 音楽ブログ 音楽の豆知識へ
にほんブログ村






0 件のコメント: