2012年2月3日金曜日

カフェ・デ・ロス・アンへリートス

(*)ガルデルが頻繁に出没した有名な“カフェ・デ・ロス・アンへリートス”の前身はカフェ“バー・リバダビア”の名前でリバダビア大通りとリンコン(現在の国会議事堂の裏近く)の角に1890年の頃バウティスタ・ファシォが営業を始めた。そこは倉庫跡で床は貧弱のむき出しの土間であった。ガビーノ・エセイサやホセ・ベティノティ,イヒニオ・カソォン等の有名なバジャドール達か出入りした痕跡を留めていた。そして,彼等のパジャーダ実演を目の前に聴く事ができた時代で,町團外に住む人々の隠れ家的な場所であった。後の1919年にアンヘル・サルゲーロなるスペイン人がこの場所を買いとった時はバジャドール風のトローバは威力を失う過程で,その角はタンゴの味と色に染まり変わった。“カフェ・デ・ロス・アンへリートス”の新主人は彼自身の名前アンヘルをこの店の名とした。持ち主は石膏で二つのエンゼル像を店の入り口上に飾りつけ,店全体を修繕仕上げた。この場所は昔のスピネットー市場に近接していて,かの“カフェ”は直ちに常連タンゲーロやマレーボ達と大胆なペンを振るう作家連中の溜まり場と変貌した。カルロス・ガルデル,ホセ・ラサーノ,フロレンシオ・パラビチーニ,エリアス・アリッピィ,フアン・フスト,とアルフレッド・パラシオ(左翼政治家)が常時テーブルを占めていた人物達であった。この亜国風土料理プチェーロを料理給仕する場所にフロレンシォ・パラビチィーニ,ロベルト・カスアー(俳優)やカルロス・デ・ラ・プーア(マレボ・ムニョスと呼ばれた詩人*)の人物名も欠かす故には行かない存在であった。この古いカフェの思い出として早朝に夜食を取るのが習慣のカルロス・ガルデルの足跡も回想に加えねば成らない。


ソルサルは1911年頃から既にここの前身のカフェ“バー・リバダビア”に頻繁に出没していた。そして,ガルデルは持ち馬ルナティコがレースに勝利を勝ち取った日曜日の夜は取巻き連中や他の客達全員にプチェーロを振舞うのが常であった。まさに1917年4月の時の夜,ここの“カフェ”でオデオン・レーベルのマネージャー,マウリシオ・ゴルダーが栄光を勝ち得んとして朝日も射落とす勢い余る快進撃の“ガルデル-ラサーノ”二重唱に初めてインタビューした上に彼等とレコード録音契約を結ぶのに成功する。そして,モローチョとエル・オリエンタル達の歴史的最初の写真が出現由来した場所でもある。その後ここへ出入りする人物はアニバル・トロイロ,オスバルド・プグリーエセ等も常連の名に連なっている。1944年カトゥロ・カスティジョは不滅の名声タンゴとして,その名ずばりの“カフェ・デ・ロス・アンへリートス”を創作。曲はホセ・ラサーノが受け持ちトロイロ楽団演奏,アルベルト・マリーノの歌で同年12月19日録音された。こうして繁盛してきた店は近年になり営業的危機に這い込まれた末に1992年1月27日に持ち主はこの店を閉鎖した。以前に市当局はこの場所を文化遺産として宣言していたが,建物は退廃が進み2000年には崩壊初めた為に解体の運命になった。


カトゥロ・カスティジョのタンゴは...古き昔の“カフェ”をこう歌う

Yo te evoco perdido en la vida /お前の失った命を思い起こす
y enredado en lo hilos del humo, /そして,もつれた一条の煙
frente a un grato recuerdo que fumo /一喫の快い思い出
y a esta negra porcion de Café… /この黒い一塊のコーヒー
rivadavia y Rincon, vieja esquina /古き街角,リバダビアとリンコン
de la antigua amistad que regresa /古き親交の回帰
coqueteando su gris, en la mesa,/卓の上に,その灰色に媚び,
que esta meditando en sus noches de ayer./かの日の夜に瞑想ふける


Café de los Angelitos! /カフェ・デ・ロス・アンへリート
Bar de Gabino y Cazon…/ガビーノとカソンのバー
Yo te alegre con mis gritos /わが叫びとお前へのほろ酔い
en los tiempo de Carlitos, /カルリートスのあの時代
por Rivadavia y Rincon. /リバダビアとリンコン.
Tras de que suenos volaron? /その上に夢は塵ごとき散り?
En que estrellas andaran? /運勢の漂いは?
Las voces que ayer llegaron /きのうとどいた噂
y pasaron y callaron, /そして,通り過ぎ,そして,沈黙
donde estan? /何処へ行った?
por que calle volveran? /何処の通りに戻りくる?

この詞の最後に“何処の通りに戻りくる?”と有る様にこの“カフェ”は見事に再現されたのである。そして,ほとんど昔の場所近くの同じリバダビアとリンコン370,再びタンゴの響くあの“カフェ”として...古き昔のブエノスアイレスを引き戻す如く甦った“カフェ・デ・ロス・アンへーリス”。  



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